最後の旅
親子三人
自殺した息子が、
中学を卒業し
家でぶらぶらしていた頃
僕と妻と息子の三人で
ドライブにでかけました。
途中、阿蘇山が見える
大観峰(だいかんぼう)という場所で、
休憩したのです。
その時、妻は息子に
タバコを吸っていいよと
言い、息子は吸っていました。
きっと息子がタバコを
吸いたいだろうと思う
妻の息子に対する
優しさだったのでしょう...
しかし僕は、
この時、今後二度と息子と
ドライブなんかしない
一緒にいたくもないと
心の底から思ったのです。
15〜6歳の息子がタバコを吸うのを
親が待ってるなんて、
おかし過ぎるだろう?って。
犯罪者とドライブなんてご免だ!
タバコが死ぬほど嫌いな僕は、
この日から完全に
息子=タバコ=避ける
この図式が出来上がったのです。
全ては僕の息子に接する態度が冷たく、
また息子の話しも聞かず、
参観日も行かず、
ただ寂しい思いから
それを紛らわすため、
親に振り向いて欲しいために
吸い始めたタバコだったのに...
結局僕は父親への恨みから
息子を父の学者とは正反対の
無能力な人間にしてしまい
最後には生活も出来なくなって
自殺してしまう結果を招いたのです。
あのドライブのとき、
タバコを吸う息子を見て、
自分を反省していたら...と
後悔は尽きません。
でも、きっと
あの時は出来なかったでしょう...
僕はそれほどまでに父を恨み、
すでに息子まで恨んでいたのですから...
決して人を恨んではいけない。
それを知ったのは
息子の死でしかなかったのです...僕は...
あの最後のドライブが今も
脳裏をかすめます...